慣れは大敵(6月8日)
「慣れは大敵」。元県警察官は現役時代、6月に入ると鏡に向かって言い聞かせた。年度初めの緊張感が幾分ほぐれ、気が緩みがちになる。それ故か、不注意による痛ましい事故が増える▼水上の新たなレジャーにも当てはまる。ボードに立ち、パドルと呼ばれる櫂[かい]をこいで進むスタンドアップパドルボード(SUP・サップ)。難しい資格がいらず、手軽に楽しめるため幅広い世代から人気を集めている。溺れたり、遭難したりするケースが絶えない。海上保安庁によると、初心者より始めて1年未満の愛好者が災難に遭う割合が多い。吹き渡る涼風に心が解き放たれ、警戒心が置き去りになってしまうのか▼郡山市の猪苗代湖では2年前、男性が遺体で発見され、近くにサップのボードが浮いていた。アウトドアに関わる県内各団体は「自分なら大丈夫とは思わないで」と、戒める。事前に天候をしっかり確かめ、救命胴衣を着用する。自然の中で過ごす最低限のルールを守りたい▼先の元警察官は「6月の油断」を目の当たりにしてきた。胸が痛む通学路での飛び出しもあった。「思わぬ不幸から自身を救うのはいつも警戒心」。肝に銘じて心躍る趣味の世界にこぎ出そう。<2025・6・8>