渡辺真起子「無明の橋」で映画15年ぶりに単独主演、冒頭9分セリフ0…言葉超えた匠の技披露
「無明の橋」で、映画では15年ぶりに単独主演した渡辺真起子(C)2025「無明の橋」製作委員会 渡辺真起子(56)が、映画「無明の橋」(坂本欣弘監督、11月28日に富山で先行公開、12月19日から全国公開)に主演することが28日、分かった。10年「トルソ」(山崎裕監督)以来、映画では15年ぶりの単独主演作。劇中では、3歳だった愛娘を亡くして心に癒やせぬ傷を負い、強い自責の念を背負いながら生きる女性を演じた。冒頭9分超にわたりセリフがないなど、沈痛な思いを抱え、言葉が少ない役どころを目線、うつむく姿勢などで表現する匠(たくみ)の技を見せて演じ上げた。 【写真】15年ぶりに単独主演した渡辺真起子と長編映画デビューを果たした陣野小和 「無明の橋」は、古くから山岳信仰の対象とされてきた富山県の立山に入山を許されなかった女性のために3年に1回、催される女人救済の儀式「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」がモチーフ。白装束と赤い帯を着けて目隠しをし、さんずの川に見立てた布橋を渡ることで極楽浄土を願うという儀式に、導かれるように参加した渡辺演じる八木由起子が、立山で出会ったさまざまな人々と出来事を通じて、いかにして新たな1歩を踏み出せたのかを描く。 渡辺は「大切な人を失ってしまったその人はどうやって再生するのでしょうか。答えは失ったことがある人にしかわからないのかも知れません」と語った。演じた由起子は、語りかけられれば「はい」など相づちは打つが、主体的に言葉を発することは少ない。それほど深く傷ついた女性を熟慮して演じたことは「人は必ず、その時を迎えます。それが他者なのか自分なのかは分かりませんが。魂というものがあるのなら、それはどこに行くのでしょう」という言葉からもにじむ。「構想から、気づけば9年という月日が流れていました。ずっと心に引っかかっていた思いを、ようやく物語にすることができました」と語る坂本監督の思いも踏まえ「監督が紡いだ時間は見つめている者と見つめられている者の物語になっていました」と語った。 ○…立山で育ち「布橋灌頂会」の手伝いをしていたことをきっかけに由起子と行動を共にする少女・沙梨を、長編映画デビュー作となる陣野小和(19)が演じる。「布橋灌頂会」への参加をきっかけに、由起子と沙梨と関わり合いを持つ夏葉を木竜麻生(31)、由起子の過去を知り優しく寄り添う美佐江を、ご当地富山出身の室井滋(66)が演じる。