丹沢で遭難の60歳、警察救助隊を訪ねてお礼 交代で3時間背負って下山
救助された女性と当時の活動を振り返る山岳救助隊=4月、秦野署 年間90万人ほどの登山客が訪れる表丹沢は本格的な行楽シーズンを迎えた。多くの登山客が入山するのに伴い、既に山岳遭難事故も発生しており、山岳救助隊を備える秦野署では「表丹沢はメジャーだが中級者向け。万全の準備と余裕のある計画で臨んでほしい」と呼びかけている。 【地図で見る】救助された女性登山客が歩いた「表尾根縦走コース」 「命を助けていただいた。ありがとうございました」。12日、塔ノ岳から大倉へ向かう山道で歩行困難となり救助された平塚市の女性会社員(60)は回復後、救助のお礼に署を訪れた。恐縮し、何度も頭を下げた女性に当時の状況を振り返ってもらった。 ■人気の縦走コース、26歳の息子といっしょに 女性は5日に市街地や湘南の海を見渡せることで人気の「表尾根縦走コース」(ヤビツ峠-塔ノ岳-大倉)を、2週間前に踏破した息子(26)と歩いた。女性は登山初心者だったが週末には近所を10キロほど走り込むなど体力には自信があり、昼ごろに山頂に到着した塔ノ岳(1491メートル)までは順調だったという。 雲行きが怪しくなり、下山を急ごうと大倉に向けて歩き出した際、ひざの両側に違和感を覚えた。テーピングで処置をしても力が入らなくなった。一歩進むだけで痛みが走る状況で眼前に広がるのは、標高差千メートル超を下る6キロ以上の登山道。「転げ落ちそうで崖が怖かった」と恐怖心に支配されていったという。ペースは落ち、枝をストック代わりに使っても状況は好転せず、堀山の家付近(千メートル)でとうとう歩けなくなった。 周囲の登山者が午後3時半ごろ119番通報し、痛み止めの薬やアルミシートで保温するなど処置してくれたという。女性は「気力も体力もあったのにヒザから崩れるような感覚になるとは思わなかった。ショックでお礼の言葉も言えなかった」と振り返った。 近くでも転倒事故があり、すでに救助隊が現場付近に向かっていた。女性の情報も登山者から寄せられ、二手に分かれて同4時に女性と合流。濃霧でドクターヘリが要請できず、隊員3人が交代で背負いながら2・5キロほどの登山道を約3時間かけて下りた。女性は骨には異常なく、数日後には日常生活ができるまで回復したという。神奈川新聞社